『ファーストフード・ネイション』★★★☆☆

「世の中には、知らない方が幸せなことがたくさんあるんだよ」というキャッチコピーで、アメリカのファーストフード業界の内幕を描いた衝撃の問題作。
…ということなのだが、日本の食料業界の「偽装」問題がこれだけ毎日のように報道されている今となっては、その衝撃がかなりやわらいでしまうのも皮肉な話である。
それでも、この映画を観たら、とりあえずは今、自分が食べているモノについて、何らかの疑問を持たずにはいられないのも事実。そう、「安くて美味しい」には、必ずそれだけの「理由」があるのだから。
あれだけ BSE で大騒ぎになった日本でも、今となっては牛丼、ハンバーガー、激安焼き肉…と、出所も安全性もわからない「安くて美味しい」牛肉が当たり前のように大量に消費され続けている。
あれだけ安全性が疑問視された中国の食品についても、その後果たして安全になったのか報道されることは殆どない。
そして今は、国内の「偽装」問題を騒ぎ立てるのにマスコミは大忙し…。

そしてここにも大きな影を落としているのが「格差社会」。世界中に蔓延している「富裕層はひたすら金持ちに、それ以外はひらすら貧乏になっていく」このシステムから抜け出すことはもはやできないという現実はやっぱりキビシイ。

そんな格差社会に組み込まれた世界中の企業は、貧乏人から得られるほんの少しの収益を少しでも大きな利益にするためには手段を選ばなくなっている。そうしないと、次は自らが潰れてしまうのだ。
それはマスコミも同じで、センセーショナルで新鮮な話題を毎日提供し続けるのは、何より視聴者に飽きられてしまわないようにするためだ。内包する問題が片付いていなくても、とにかく飽きられる前に「数字の取れる次の話題」を探さなくてはならない。こうして、物事の「本質」は、少しずつ薄められていくのだ。

まぁ、何はともあれ、すべてのジャンクフードを捨てて生活していくことは、それこそ余程の富裕層でないと難しい。とは言っても、悲観的になったり神経質になったりする必要はないのかもしれない。(例えば「基準値」は「致死量」ではないのだから。)
だけど、物事には必ず「理由」がある。
そのことだけは、忘れてはいけないのだと思う。

ところで、この映画のタイトルは「ファストフード・ネイション」ではなく「ファーストフード・ネイション」になっている。そう言えば、日本ではずっと「ファーストフード」だったのに、いつの頃からか「FAST FOOD は FIRST FOOD ではないのだから【ファストフード】と書くのが正しい」みたいなことを言われるようになった。そもそも「FAST」自体、「ファスト」と「ファースト」の中間みたいな発音なのだから、無理やり直す方が不自然だと思っていただけに、この決断は正いと思うのだけど、公開されることにはまた、「ファストフードでないのはおかしい」なんて言う人が出てくるのだろうか?
ま、どっちでもいいけど。


『ファーストフード・ネイション』予告編


ちなみに原作はこちら。未読だけど、完全なノンフィクションであるこっちの方が読み応えがあるのかも?

ファストフードが世界を食いつくすファストフードが世界を食いつくす

エリック シュローサー Eric Schlosser 楡井 浩一


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